赤い。

朱い。

紅い。

赤い空に、

朱い大地に、

紅い世界。

そして、なにより紅いキミ。










「はい! 祐一くん。名雪さん」

眩しいほどの笑顔でタイヤキを二人に渡すあゆ。
そしてすぐに自分もタイヤキを手にとる。
幸せそうにタイヤキを頬張るその光景に自然と笑みが浮かぶ祐一。

「う〜っ」

そんな祐一を見て面白くないのが名雪嬢。
いつも通りの怖くない睨みを受ける祐一はどうしたものかと苦笑する。
そんな二人を?マークを浮かべ、首を傾げるあゆ。

「そ、そういえばよくあゆがタイヤキ屋にいるって分かったな。名雪」

話題を捜してふと思った疑問。
あゆはいつもこの時間にタイヤキを買っているのか?

「あゆちゃんいつもあそこにいるもん」
「うぐぅ、それだとボクいつもタイヤキ食べてるみたいだよ」

それは否定できないと思うが、祐一は今日7年ぶりに会うし、名雪にツッコミは不可能。
よってあゆのつぶやきは流された。

「もし、あゆが今日買いに来てなかったらどうするつもりだったんだ?」
「大丈夫だよ。あゆちゃんいつもいるし」
「なら買った後だったら?」
「……大丈夫だよ」

考えてなかったな、コイツ……。

「会えたからいいんじゃないのかな? 祐一くん」
「……まぁ、いいか。名雪なりに気を使ったんだしな」
「そ、そうだよ。祐一。細かいことは気にしちゃダメだよ」
「お前は気にしろ」
「だ、だおっ」

さすがに少しヘコむ名雪。
それから、三人はいろんな話をした。
まずは7年前から。
祐一がいなくなってから、名雪とあゆの出会いの話。
すぐに友達になって、二人の共通の友人、祐一の悪口から良いところまで言い合ったこと。
年月がすぎ、名雪とあゆの学校のこと。
名雪が眠りながら闘ってたこと。
あゆの魔法の失敗で学校の闘技場の半分が何故か土に埋まったこと。
その土を取り除く作業に一日以上かかったこと。
香里のこと。
クラスメートのこと。
最後に祐一の旅のことも少し話した。

寒さを忘れて。
笑って、怒って、哀しんで。
それでも最後はやっぱり笑顔で。
楽しくて仕方がない。
笑って。
笑って。
笑って。
三人は楽しくて仕方がなかった。

だから、夕暮れの世界になると寂しかった。
だけど、やっぱり笑う。
また、明日も会えるから。
明日を思うと自然と笑う。笑顔が浮かぶ。

あぁ、やっぱりこの再会は『奇跡』と呼んでも良いだろう。










「それじゃまたな、あゆ。もう食い逃げするんじゃないぞ」
「食い逃げなんかしてないよっ。あ、明日お金払うもん!」
「そうだよ、謝ったらタイヤキ屋さんも許してくれるよ」

やっぱり名雪もあゆを食い逃げ犯と思っているようだ。
それに気がつかなかったあゆは、そうだよね! と、元気よく頷いていた。

「ずいぶん話しこんじまったな。名雪、宿屋に案内してくれないか?」
「え? うちに来るんじゃないの?」
「は? いつそんなこと決まったんだよ」
「今から宿屋捜してたら暗くなっちゃうよ。それにお金ももったいないし。だからうちに行こう」

確かに名雪の家に行けば宿代も浮くし、宿屋への案内も必要なくなる。

「けど、いきなり泊まらせてくれって言うのもアレだろ?」
「大丈夫。お母さんなら『了承』してくれるよ」

にっこうり笑う名雪。
娘がそう言うんだからそうかも知れないな……。それに秋子さんにも挨拶しなければと思っていたし、ちょうど良いと言えばちょうど良いか。

「よし、名雪。いくかっ」
「うん!」

秋子さんに会うのも久々だな。まぁ、当たり前だが。
コレで『奇跡の再会』、第三弾になるのか?
いや、待てよ。奇跡というのは起こるわけがないことが起こるから奇跡なんだよな。
秋子さんが名雪の家にいるのは当たり前だし、『奇跡』じゃなくて『必然の再会』か?
それなら名雪やあゆがこの街にいるのも辺り前なんだから、そっちも『必然の再会』になるのか?
むぅ。しかしだな……。
いや、待てよ……?
おぉ……。ん? そうだな……。

「どうしたの? 変な顔してるよ」
「変な顔言うな。気にするな、大したことじゃない」

本当に大したことじゃないし、どうでも良いか。

「そう? ならいいけど」

ぴたりと立ち止まって、くるりと祐一の方を向く名雪。顔にはやっぱり満面の笑み。

「ついたよ。ここが私たちのおうちっ」

私『たち』? あぁ、名雪と秋子さんの家ってことか。

名雪はスキップしそうな勢いで玄関に向ってドアを開けると待ち伏せていたように若い女性が立っていた。

「ただいま〜」
「おかえりなさい。遅かったわね。あら? お友達? いらっしゃい」
「あ……」
「祐一だよ! お母さんっ」

人のセリフを遮るな! てかっ、お母さん!? この人って秋子さん!?? わかっ! 若すぎ!!

祐一ちょっとパニック気味。秋子さんちょっと驚き気味。

「お久しぶりですね……。祐一さん」
「……はい。お久しぶりです。秋子さん」

両者は微笑みを交し合う。

「外は寒かったでしょう。上がってください」
「あ、はい。お邪魔します」
「違うよ、祐一」
「え?」

名雪が何かを否定する。妙なことは言ってない筈だが……? と首を傾げる祐一に秋子は微笑みながら説明する。

「ここは祐一さんの家でもあるんですから、『お邪魔します』は変ですよね?」
「ですが……、俺はずっとここに来てないワケですし……」
「それでも、この家が祐一さんの家であることは変わりませんよ」
「そうだよ。ここは『私たち』のうちなんだよっ」

私『たち』……ね。
この二人は変わらないな……。
昔通り、温かすぎる程温かい。

「そう……ですね。二人とも、ただいま」

『おかえりなさい』

3人の微笑みは正しく家族に対してのものだった。














〜あとがきと云うか何と云うか〜

こんばんは。海月です。
あゆとの会話と秋子さんとの再会な第三話。

話が短すぎて内容がどうも言えないなと思う今回。
あえて言うならこのSSでもあゆはタイヤキ泥棒なのかって事でしょうか(笑



海月さんに第三話、第四話同時に頂きました〜

なにやら冒頭の部分が不吉な感じがしますが内容はほのぼの〜

久しぶりの再開、そしてその語らいの雰囲気がとても良い感じです!

そして次は第四話です〜

 

感想などは作者さんの元気の源です掲示板へ!

 

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