「……うまい」

「でしょっ。ここのたい焼きは世界一だよ!」


祐一とあゆは以前約束していた通りたい焼きを食べに来ていた。


「ツブも捨てがたいがこのコシもなかなか……」

「やっぱりたい焼きのことはあゆちゃんだよね〜」

「もしかしてこれが昼食なのかしら?」

「あゆさんのたい焼き好きには勝てませんね」


…………オマケが多分に付いてきているようだが。




















祐一が久瀬に呼び出されてから四日後、今日は学園が午前中まで。

公園の一角の木で出来た無骨なテーブルとそれを囲む四つのベンチ。その場を雪や雨風から凌ぐ屋根もあるそこで六人は思い思いに座っていた。

そこからは同じ公園内にあるたい焼き屋の屋台は距離と木々の障害物との関係で見えない。

ただ公園内にちらほら見かける人々の多数はその屋台のたい焼きを食べ歩いていて、その人気が窺える。


「なんで関係ないお前らにまで奢らなきゃいかんのだ、まったく」


祐一が関係ない四人――北川・名雪・香里・栞――を睨みながら、お前らには食わせんと言わんばかりの勢いでたい焼きを食べていた。


「まだ言ってるの? 大体、相沢君じゃなくてあゆちゃんの奢りでしょ、このたい焼きは」

「そうだそうだ。ケチくせーぞ、相沢」

「あゆさんから奢ってくれるって言いましたしね。お言葉には甘えないと」


正面のベンチに座っている香里は呆れ顔で、左前の北川は祐一に負けない勢いで食べていて、右前の栞はたい焼きを少し休憩してコーヒーを飲んでいた。

この三人はそれぞれ一つのベンチに一人ずつ座っている。

祐一が座っているベンチだけが何故か三人。祐一を中心に右にあゆ、左に名雪だった。

その事に最初は文句を言った祐一だったが三人でも十分座れるスペースがあっただけに結局は了解してしまった。


「祐一祐一」


名雪の呼びかけに左を向くと口元にたい焼きを差し出される。

食べて食べて。と表情が物語っていたがそれを祐一はあっさり無視してコーヒーで口の中に残っていた餡子を流し込む。

そしてテーブルの上に置かれた袋から新しいたい焼きを取り出しまた口に含む。


「ぷぅ。恥ずかしがらなくていいのに……。ならまたあゆちゃんに、あ〜ん」

「うぐっ。あふっ……うぐうぐ……」


祐一が食べてくれないので祐一を通り越してあゆにたい焼きを差し出す。

出来たてなので多少熱かった様だが、それでも美味しそうに食べている。


「……あゆは咀嚼も『うぐぅ』なのか。新発見だ」

「可愛いよね。ほらっあゆちゃん、もっと食べなよ」

「名雪さん、そんなっうぐ…………うぐうぐうぐうぐ……」


あゆが食べては名雪が食べさせ、食べては食べさせであゆはすでに三つは食べ、名雪はまだ一つしか食べていない。

名雪はあゆの食べている表情を見て楽しんでいるようだ。


…………まるでリスだな。と祐一はあゆを見てそう思う。


確かに頬を膨らませて一生懸命食べている姿はリスのようだ。


「あ、あゆちゃん。口の周りにアンコが付いてる」

「えっ、どこどこ?」

「待ってて、拭いてあげる」


ハンカチを取り出してあゆの口元を拭いてやる名雪にそういう事をするのなら場所を移動しろ。と祐一は言うが笑顔で断られた。

なら、という感じに祐一は左から右へと首を回転させるがそれと同時に名雪はあゆに同意を求めた。


「あゆちゃんもいやだよね?」

「……う、うん」


名雪の笑顔にあゆも若干顔を赤くして笑顔で返した。





北川と栞が香里側のベンチの端に移動して、最初より密着度の上がった幼馴染三人組に聞こえないように小声で話す。


「微笑ましいですねぇ。あの三人」

「ま、七年間も離れ離れだったんだからその反動かしらね」

「相沢の奴、まさに両手に花じゃねぇか、羨ましい……」


悔しそうに拳を握る北川をつんつんと栞が指で突く。

北川が顔を上げると栞は突いた指で自分自身と香里とを交互に指差してから。


「お義兄ちゃんだって両手に花じゃないですか。私とお姉ちゃんで」

「おっ、言われてみればそうだな。苦しゅうない、ちこうよれ」

「きゃー。えっちなことしたらお姉ちゃんに殴られちゃいますよっ」

「すでに殴りたいんだけど、どうかしら?」

「まだえっちぃコトしてないぞ!? 殴るならそれからに――――」

「いっぺんあんたは死になさい」

「はぐぅ!?」


手首のスナップの効いた裏拳が綺麗に北川の顔面に入る。


「あーっ、お義兄ちゃーん!」


栞は必死で手を伸ばし、ベンチから倒れ落ちそうになっている北川の手を取って助けようとする――――フリをした。


二人の間にあるテーブルのせいで腕が急激に伸びない限り届く距離ではない。

屋根を支える四隅の支柱に立て掛けている北川の槍を使えばその腕の代わりが出来るかもしれなかったが、この方法を使うと刃先を北川が掴む嵌めになりそうだ。

そもそもその槍は北川側の支柱に立て掛けられているので槍を手にするくらいなら直接北川を助けた方が早い。


結局助けられなかった、というよりも助ける気などなかった栞の視界から北川が消える。


「栞。あんたも殴られたい?」


左手に持っていたたい焼きを右手に移してから尋ねる香里。


「…………やだなぁ、冗談だよ、お姉ちゃん。北川さん(、、、、)をあんまりイジメちゃダメだよ」

「彼がバカをやらなくなったらね」


バカをやならくなったお義兄ちゃんなんて想像できないなぁ、と栞は口にはしなかった。


今、刺激を与えたら簡単に拳が飛んできそうな気がしたからである。

長年妹をやっているのだ。そのくらいの危機察知能力はある。


一方、栞には負けるがそれなりに香里と長い付き合いのある北川はというと。


「うーむ。熱々のたい焼きを食べているのに身体が冷えていくのは如何に?」

「雪の上に寝たままだからでしょ」

「なるほど」

「早く起きたらどう?」


殴り飛ばされたままの格好でムシャムシャとたい焼きを食べていた。


「うむ。それがな。この位置なら美坂の禁断の三角形が見えそうで見えないという絶好の――――」

「死ねっ!」


香里はテーブルの上にある丸まった紙屑を掴んで全力で投げつける。

だが所詮は紙屑。まったくダメージがないので香里はベンチから離れ、変態をドスドスと顔を真っ赤にして蹴り倒しにいった。


「やっぱり想像できないなぁ……」


所詮馬鹿は馬鹿と言う事か。

危機察知能力が鍛えられていない北川だった。





蹴られながらどんどん雪に埋もれていく北川を眺めながらも止めようとはしない優しい友人達。


「……なにやってんだ? あいつらは」

「気にしなくてもいいよ。いつものことだから」

「でも北川くん……雪で見えずらいけど痙攣してるよ?」

「それもいつものことだから」

「………………」

「………………」

「どうしたの?」

「…………見なかった事にしよう。あゆ」

「…………そうだね」


世の中には色んなカップルがいると言う事で。


「北川もよく生きているよなぁ。自業自得だけど」

「あれで実は二人とも楽しんでたりするからね」

「…………二人のイメージが何か崩れるよ」

「香里はともかく北川はそうでもない気がするが。見た目がアンテナの変人だし」

「アンテナで変人に決定するのは祐一くらいだよ」

「何を言うか!? 見かけがあれで中身がまともじゃそっちの方が変だ!」

「……そういうことを力説する祐一くんも十分変だよね」

「祐一が変なのは今に始まったことじゃないし」

「そうだけど……」

「妙な事を言うな、名雪。そしてあゆも納得するな」

「だって……」

「ねぇ……」


息がピッタリの二人。ムカつくのでほっぺたを引っ張って強制的に黙らせました。


「うわぁ……伸びるなぁ……」

「にゅ〜……ひたひ〜……う〜いち〜……」

「うぐぅ〜……はなひて〜……」

「うははは。うりうり〜♪」


二人の反応を見て一転して楽しくなってきた祐一。このまま弄って楽しむ事にしたらしい。





正面を見れば虐殺風景。左を見ればほのぼの風景。


「名雪さんやあゆさんには祐一さんがいるし、お姉ちゃんにはお義兄ちゃんがいるのに……私は一人かぁ」


私の王子様は何処に? と寂しげに呟く栞。

半分は冗談だが羨ましいとはやっぱり思う。


「栞ちゃん。何ならオレの知り合いを――――ぐはぅっ!」

「まだ息が合ったの。ホントしぶといわね」

「お姉ちゃん……。さすがにそれ以上は…………」


いくらお義兄ちゃんでもまずいんじゃないかなー。とは言えなかった。怒った姉は恐ろしいのだ。

大体スパッツを履いてるのだから下着を見られる心配なんかないのに。

あれ? そもそもお義兄ちゃんからしてみればお姉ちゃんは横を向いていたからスカートの中が見えることすらないはずなんだけど……。


「………………」


…………もしかしてわざと蹴られるように仕向けてますか?


栞は冷や汗をかきながらしばらく沈黙した後、


「…………王子様にはやっぱり白馬ですかねぇ」


変態チックな結論から現実逃避した。





人間の頬は何処まで伸びるのか。


「そしてあゆと名雪はどちらの方が伸びるのか?」

「うにゅにゅにゅ〜〜〜」

「………………」

「って、あれ?」


左に比べて右がやけに静かな事に祐一は不思議に思い、左手を名雪からあゆに移し両手で頬を引っ張る。


「どうした? リアクション薄いぞ」


それでも無反応のあゆに対し祐一は更に両手に力を入れ顔を覗きこむ。

そこでようやく気付いたみたいにあゆの表情が動きだす。


「…………どうしたの? ゆうい――――……いいいいいいちくん!?」


あゆは焦点が祐一に合ったと思えばいきなり顔を真っ赤にしてどもる。

自分の顔から僅か数センチの先にあるその顔に激しく狼狽し、祐一の手を振りきって急いで離れる。

が、座っていたため上半身を逸らすだけになり、バランスを崩してベンチから倒れそうになる。

手をバタつかせて何とか体勢を立て直そうとするも虚しく、勢いは止まらず、これから身体に襲いかかる衝撃に身を固くした。

だけど、その衝撃はいつまで経ってもやってこない。


「…………あ、あれ?」


あゆはいつの間にか瞑っていた眼を恐る恐る開けると、祐一が呆れた視線を向けながらも自分の手をしっかり掴んでくれていた。


「なにやってんだ? あゆ」

「……なにって…………うぐぅ……」


倒れそうになったおかげで引いていた顔の赤みが再びやってくる。


「いきなりキスされれば驚くに決まってますよ。祐一さん」


栞が目をキラキラさせながらはしゃいだ声を出す。


「なっ…………!」

「さっささささされてないよ! 栞ちゃん」


祐一も若干顔を赤らめ、あゆはもう真っ赤になった。


「そうなんですか? 今のはしてるようにしか見えませんでしたけど」

「祐一……キス……したの?」


小首を傾げる栞にジト目で睨む名雪。


「してねぇ! つかっ栞! お前、さっき意識どっかにぶっ飛ばしてただろうが! そんなんでホントに見てたのか!?」

「あれ? ばれてました?」

「やっぱり適当言ってただけか!?」


栞は舌を可愛らしく出すが今の祐一には憎らしくにしか見えない。


「なんだか盛り上がってるわね」


祐一の叫びを聞いてか北川を蹴り飽きたのか香里が戻って来た。


「あ、お姉ちゃん。今、祐一さんがあゆさんにキスしてたよ」


香里は右眉だけを器用にピクリと動かし、祐一を睨む。

だけどそれは一瞬だけで、すぐにクスクス笑って妹のからかいに便乗する。


「こんな人前でキスするなんて恥ずかしい人ね」

「だからやってねぇーー!!」


叫び喚く祐一だったがいつからか服を引っ張られていた事に気付く。

ゆっくりと睨みつけるようにその相手を見る。


「なんだよ。名雪」

「……本当に、キス、してない?」


栞や香理のようにからかいではなく名雪は真面目に聞いてきた。

腹立たしさをぶつけようと祐一は両手で名雪の頬を掴み、思いっきり引っ張ってやる。


「本当に、キス、してねぇ」


更に頭突きをするように顔を近づけ、睨む。


「…………そんな事するから『キスしてる』なんて言われるのよ」


香里の呟きで先程のあゆに対してと同じ状況になっている事に気付き、祐一は急いで両手を離し、そして顔を遠ざけて行く。

だがすぐに後頭部を何かにぶつけ、後ろを振り向く。

そこにはあゆがいて、挟まれている事を思い出し、立ち上がってベンチから離れる。


「どこ行くの?」

「……その……なんだ、いまだ倒れたままの北川の容態が急激に気になってな」


白々しい。という香里の呟きは聞こえない事にした。


「北川ー。おーい、生きてるかー?」


腰を落とし、ぺちぺちと北川の頬を叩く。

それに反応して北川は目を開き、


「…………なんだ、相沢か」


また閉じた。


「なんだとはなんだ。北川め」

「オレは美坂の熱い目覚めのキッスを所望する。でないと起きん」

「………………」


祐一は頬を少し引きつらせ、右手を振り上げる。

握り締められた拳には急速に雷が宿り始める。


「なら――――永遠に寝てろ!」


北川の顔面を目掛けて放った拳は落雷のような線を残し、振り下ろされた。

ジュッという音と共に視界を奪うほどの白い蒸気がその場に立ち籠める。


「ちぃっ、避けやがった……」


頭を横へずらしてギリギリで避けた北川は祐一が舌打ちしている間に起き上がり、その場を大きく離れる。

蒸気で逃げた北川の姿が見えないため、祐一は左手を水平に動かしながら僅かな風を発生させ、視界を取り戻す。


「……な、なにしやがる!? 相沢!」

「うるせぇ! 喧嘩売ってんのか!? お前は!」

「ケンカ売ってるのはそっちだろ!? いきなり何なんだ!?」


そう口にしてから何かに気付いたようで、ははーん。と北川は訳知り顔で頷く。


「なるほどなー。そういうコトか」

「……な、なんだよ」


自信満々の様子の北川に祐一は思わず怯む。


「オレが美坂にチューしてもらえるからってそんなに羨むな! 相沢!!」

「…………は?」

「わかる! その気持ちはわかるぞ! 相沢っ!」


勝手に分からないでほしい。と祐一は思う。


「しかし! 美坂は譲れん! お前は水瀬か月宮さんにしてもらうんだなっ!」

「……やっぱ喧嘩売ってるよな、お前」


バチバチッと音を立て、雷が再度祐一の右手に宿り始める。

ただの八つ当たりのつもりだったが本気でムカついてきたようで、先程より電力が大きい。


「取り合えずまずは一発――――殴らせやがれ!」

「ちょってめっ。魔術は反則だろーーっ」


追いかける祐一に逃げる北川。

雪が部分的にどんどん溶けていった。





壮絶な追いかけっこをのんびり観戦するベンチ側。
 

「いつキスする約束したの? お姉ちゃん」

「…………あんな事言うなんてまだ蹴り足りなかったのかしら?」


あれ以上やっても北川さんを喜ばせるだけだよ。とは栞は言わなかった。

むしろ言いたくなかった。義兄を変態だと思いたくはない。


「それにしても必死に逃げてるね。あの槍渡したほうが良いのかな?」

「無駄よ。渡してもどうせ使わないだろうから、むしろ邪魔になるだけだわ」

「使わない? あんなに攻撃されてるのに?」


まさか……祐一さんにも殴られたくなったんですか…………?


いくらなんでもそこまでは。と首を振ってその考えを否定する栞。


「北川君はね。自分で戦うと決めた時以外は絶対手を出さないの」

「そ、そうなんだ……」


良かった。と栞は安堵する。

そんな栞を見て香里はまた変な事を考えていたな。と思った。


それを尻目にこの一連の出来事に目もくれない者とやりたくてもやれない者。


「あゆちゃんにも確認。本当に、キス、してないんだよね?」

「だからしてないってば〜……」


意外としつこい名雪にちょっと泣きそうになったあゆであった。




















公園が広いといってもそこには人気があって。


「いいか、いくら公園でもここは公共に場であってだな――――」


遊び回れる広場があってもそこを離れれば木々や何らかの用具があるわけで。


「魔術を遣えば物を壊すし、人に怪我をさせるかもしれん。だから――――」


そんなところで暴れたりすれば、勿論。


「――――聞いてるか! 小僧ども!!」


街を巡回する警備兵に見付かって説教を頂戴したりするわけです。





祐一と北川が直立不動の姿勢になってから小一時間ほど経つ。

顔の半分が髭で覆われたがっしりとした体格の中年の男はまだ口を閉じる様子はない。

説教をくらう二人と同じく髭の警備兵の後ろに待機している彼の部下らしき若い警備兵達もうんざりとした様子だ。

その内の一人がようやくおずおずと動きをみせる。


「……隊長。その子達も反省してるようですし、それくらいにしてあげたらどうでしょうか?」

「駄目だ駄目だ。まだ話す事は山ほどある」


首を振る説教好きの隊長に部下は内心溜息をつく。


「しかし……他の仕事も詰まってますし……レイ様から指令された……」


……アレか、と思い出したように隊長は呟きながら自分の髭を撫でる。


「おい小僧ども。儂の話を重々肝に銘じてよく反省しろ。わかったな!」

『はい!』


祐一と北川は声を重ねて力一杯返事をする。





「お疲れ、二人とも」


警備兵が去った後、近づいてきたメンバーの内、香里が代表して労う。笑いを堪えながらだが。


「…………な、長かった」

「……オレはむしろ被害者なのに」

「あぁ? 北川がさっさと俺に殴られればこんな事にはならなかったんだろうがっ」

「ムチャクチャ言うな! 大体あんなんくらったら死ぬっつの!」

「一回くらい良いじゃねぇかっ。減るもんじゃなし」

「減るし一回きりで終わりだろ!?」

「俺は北川を信じている」

「嬉しくねー」

「信じるものは救われるぞ」

「ならまずオレの財政を救ってくれ」

「俗物がっ。そんな金だけを欲する穢れた心で世界が救えるか!」

「世界より明日の昼飯代だ!」


口論を始める二人。

このままだとまた暴れ出しそうだと思った香里がぼそりと一言。


「騒いでたらまたさっきの髭隊長さんが飛んで来るわよ」

「悪かった北川」

「気にするな相沢」


先程の説教がよほど堪えたのか途端に握手を交わす二人。

そんな二人の様子を見て他の皆が笑う。


「最近はただでさえ警備兵が多いんだから暴れたら見付かるなんて分かってたでしょうに」

「……香里も暴れてた癖に」

「あたしは魔術なんて目立つような事してないもの」

「……うぐぅ」


祐一があゆ特有の呟きをもらす。

あゆはマネしないでよ。と思いながらもそれを口にはしなかった。

それよりももっと気になる事があったからだ。

周りをキョロキョロを見渡し、そして何もない事に当然と思いながらも首を捻る。

奇妙な感覚――いや、あゆに言わせてみれば――『変な感じ』。

祐一にお願いして『学校』に行って貰った時に感じたあの時に似た感覚。

それをさっきからずっと感じていた。

感じて、気になって、それがなんなのか考えるとぼんやりとなって、考えても分からないから落ち着かなくて。


「…………うぐぅ。なんなのかなぁ、これ」


誰にも聞こえないように小さく呟きながらも自分でこの感覚はなんでもないはずだ。と思っている。

祐一から聞いた『学校』についての報告。

それは『魔物がいた』と言う事だけ。

あの小さな森に魔物がいるのは珍しい事ではあるがまったくない事ではない。

だから、あゆも素直に信じた。そもそも疑う理由などなかった。

だけど、あゆは知らない。

あの森に『空間魔術』が仕掛けられていた事を。


『魔物がいるからしばらく学校には近づくな』


祐一にそう言われてあゆは近寄らないようにした。

祐一はあゆに知られない内に解決しようと思っていた。

余計な心配をさせたくなかったから。


だから、あゆにしてみれば『学校』への『変な感じ』はただの気のせいになっていた。

だから、今のこの感覚もまた気のせいだと思っている。

例え、それに以前とは違うぞくぞくと悪寒の様な感覚が混じっていたとしても。

あゆは気のせいだと思ってしまっていた。


















〜あとがき〜

幕間はあんな使い方でいいのだろうか……?

どうも。またもお久しぶりの海月です。

遅くて本当にスイマセン。なんかどんどん投稿スピード落ちてますよ。やばいよやばい。

今回は祐一の街でのお留守番+あゆのお礼編(オマケ付き)です。

祐一甘い物は苦手と言ったのになんでたい焼きは食ってんだろうか?

その辺を前回でギャグとして取り込めばよかったとちょっと後悔。

けど、ギャグやるにはやっぱこのメンバーだなぁと思いました。

十七話にまで来てまだギャグやってんのかと突っ込まれそうですが。もっと話し進めろよ、自分。

そんなこんなで次回は久瀬主観!

早く出来る事を祈って、それでは。



海月さんから幕間と第十七話を頂きました。

幕間の方にも何か書こうかと思いましたが何もないほうが雰囲気的にいいと思いましたので無しにしました。

というわけで、幕間が暗く十七話が明るい話でよかったです。

久瀬の方はヤタが死んでいるとか謎が出てきて気になります。

そして祐一達の方は北川が最近、GS美神のSSを読んでいるせいか横島に見えてきましたw

愛すべき殴られキャラですね〜

香里と仲良くね〜私のSSでは絶対無いのでww

 

感想などは作者さんの元気の源です。続きが早く読みたい人は掲示板へ!

 

幕間へ  第十八話

 

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