バトルフィールドオブチルドレン
第21話 魔王登場
「ついた!」
ネロと香里達を追いかけて俺はものみの丘にたどり着いた。
そこで俺が見たのは予想通りに香里達と真琴達が戦っている所だった。
「これは一体どうなってるんだ!美坂達と戦っているあいつらは一体誰だ?」
「あ、あれは水瀬さん、どうしてここに!」
「それにネロがいない」
北川達が驚きながらそれぞれ言う。
俺も確かにそう思う、特にネロの存在だ。
けどそれもこの戦いが終わってからだな。
それにしても何でだ、真琴も天野も人を襲うことはないはずなのに何で戦ってるんだ?
おまけにあの三体の式神、確かどこかの神話に出ていた何かの神様の子供の名前から名づけた天野のお気に入りじゃないか。
強さもあいつの出すことができる式神の中で上位クラス。
「とりあえず、美坂達が戦っている相手が敵のはずだ。魔物も三体ほどいるし」
「そうだな、このまま手をこまねいているわけにもいかないしな」
やばい、北川達も戦闘に参加してしまう……
これ以上騒ぎが混乱し始めたらもう止められなくなる。
けど、今でも相当混乱しているこの状態をどうしたら止められる?
そうだ、あの方法なら止めれるかもしれない。
かなり単純な方法だけどそれがまたいいかも。
そう思った俺は魔法を使うためにイメージを練る。
前にあゆから教えてもらってから一回も使ったことがなかったからイメージが想像しにくい。
確か……こう自分の口の前で空気を圧縮するような感覚で……よし、こんな感じだったな。
そして俺は大きく息を吸って……叫ぶ。
「その戦い待ったぁぁぁぁ!!」
魔法『スピーカー』……自分が言った言葉の音量を何倍にも増幅することができる。
その魔法を使ったのでここら一帯に俺の声が響き渡る。
自分の耳にもかなり響く、ちょっと威力を強くしすぎてしまったかな……
けど、そのおかげで戦闘がぴたっと止まった。
<名雪視点>
「その戦い待ったぁぁぁぁ!!」
「な、なに!?」
久瀬君が来てくれたおかげで何とか戦えるかなと思った時、急に大声が辺り一体に響き渡る。
この声は、祐一!
久瀬君の言ってたことは本当だったんだ。
そして声のした方を見る。
やっぱり祐一だ。
「水瀬さん、戦闘中に余所見は危険ですよ……って相手も動きが止まった」
それはそうだろうね、あの二人は祐一に逢いたいだけだったんだから。
祐一に逢えたら戦う理由がなくなるし。
「ゆういちー!」
と、思った瞬間香里達と戦ってた真琴っていう娘が祐一に飛び掛る。
祐一が危ない!って何、あれは。
そのまま祐一に抱きついている。
う〜、わたしだってなかなか出来ないのに……
って違う、とりあえず祐一に問いたださないと。
本当はあの二人がいなくなってから聞こうと思ってたのに、う〜なんか嫌な予感がするよ。
そして他のみんなも祐一の所に集まる。
久瀬君たちは展開についていけないみたいで呆然としている。
わたしだってついていけていないところがあるから当然だよね。
今戦ってたのだって女の勘に引っかかるっていう根拠のあるものじゃないし。
それでものみの丘の頂上の形を変えてしまったんだからやりすぎたかな。
そのほとんどは始めの栞ちゃんの一撃だけど。
「え、えーと……」
祐一が何かを話そうとする。
けど、祐一の顔が何かに怖がっているような顔をしているけど何に怖がっているんだろう。
「それじゃあ、とりあえずお互いを簡単に紹介するな。天野、真琴こっちは俺の学校の友達だ。細かいところはあとで話す」
「仕方ありませんね、わかりました」
「いろいろ聞くから覚悟しなさいよ」
「で、次はこっちの二人だけどまずは天野美汐だ。俺が昔、魔界の穴に落ちて魔界に行ってしまったことは知っているよな。
その時、落ちた衝撃で気を失っている俺を見つけて助けてくれたんだ。そして俺にくっついているツインテールの方は沢渡真琴だ」
あれ……沢渡真琴……改めて聞くとどこかで聞いたことがある気がする……
「実は名雪は真琴のことを知っているんだけどな、まあ分からないだろうけど」
「えっ」
「俺が穴に落ちる何週間か前にこのものみの丘で怪我した狐を拾ってきただろ?」
「うん、そして祐一と一緒に穴に落ちてしまって……え、まさか」
「そう、その狐だ。向こうで生きるために魔族になったんだ」
「そうなんだ……」
あの狐が……そういえば祐一が沢渡真琴って名前を付けたんだっけ。
それでかすかに覚えてたんだ。
「だから、何で戦っていたのかは分からないけどこの二人は魔族だけどいい奴だよ」
「けど祐一さん、そのお二人は魔王の側近ですよ」
「知ってたんだ、佐祐理さん。確かにそうだけどそれでもこの二人は大丈夫だよ」
「……そうですか」
みんな暗い顔をする。
わたしもそう、何か祐一はわたし達に隠し事をしている、今の言葉でそれが分かった……
<祐一視点>
俺の言った言葉でみんなが暗い顔をする。
やはり今の言い方では俺が隠し事を言ったことがばれてしまったか……
この二人が来た時点で近いうちにばれるとは思うけどまだそれは言いたくない……
その勇気が無い。
と、今そのことに気を取られているときじゃない。
「ネロは一体どうしたんだ。姿が見えないんだが」
「それは、真琴が美汐と一緒に倒してしまったよ」
「な、何!それは本当か!」
今の言葉に久瀬が反応する。
「ええ、それが今回私達がここに来た理由でしたし」
「けど、何故だ。君達と同じ魔族だろう」
「それは魔王が人間と争うつもりが無く人間を襲う魔族がいると説得、または倒すように命令されているからです」
「!!!」
天野の言葉で全員が驚愕の顔をする。
当り前だろうな、今まで人を混沌に落としていた存在が争うつもりが無いときているから。
「と、話の途中で悪いけど真琴、そのネロの死体が見当たらないんだが」
「え、嘘!あ、本当に無い」
「そんなまさかしとめ損ねていた」
「じ、じゃまだネロは生きているって事か」
北川が叫ぶ。
これはちょっと嫌な予感がするな。誰であっても追い詰められたら何をするか分からないものだからな。
<ネロ視点>
「はぁー……はぁ……ぐぉ……」
な、何とか命拾いをしました……
あのあと這い蹲りながらあの場所から少し離れた所まで移動してきたワタシは木陰に入り少し落ち着く。
けど、このままではどちらにしても死んでしまう……
助けがくればまだ何とかなるかもしれませんが。
く、くそぉ……た、ただでは死ねません。
ちょうどあいつらがいる場所があそこなので最後の手段が使えますね。
そして残っている魔力をかき集めてそれを実行する。
よ、よし……これで今度こそあいつらを始末できます……
そんな時、ワタシに近づいてくる足音が数人やってくる。
「無様な姿だな、ネロ」
「こ、これはクライアントではないですか……」
まさかクライアントが手下の兵士を数人連れてやってくるとは。
これはツイてます、こないと思っていた助けがきました。
「くっ……で、でも、もう大丈夫ですよ。たった今、強力な奴を召喚しました。あいつなら確実に今のお姫様をなら殺すことができます。
私が制御できないほどですから。でもここの騎士団よりは少し劣ります闘技場から呼び寄せて倒せば完了ですよ」
「そうか、よくやった。私は今からそれの確認をしにいこう。が、その前に」
そう言ってクライアントが右手を上げる。
そうすると兵士達が一斉に手を前に出してそこからファイアボールが現れる。
「こ、これは……どういうことですか」
「私は始めから事が終われば君を始末する予定だったのだよ、けど君はなかなか強力でどうするかとおもっていた所なのだよ」
「く、くそっ……」
体が動かない。
「では、さようなら」
その言葉で一斉にファイアボールがワタシに向かってやってくる。
「お、おのれぇぇぇ」
<祐一視点>
「くそ、嫌な予感がしたとたんこれだ」
「これは何?地面が光っている」
香里が言う。
「これは魔方陣だ。ネロはおそらくこれを使って魔物を召喚していたんだ」
これで謎が解けた。召喚っていうのは魔界の穴と逆の性質を持っている。魔界から人間界に何かを送り込むって事なんだから。
違うところは召喚はそれを実行する者がすきにその物を選べるって事だけどそんなことをするにはものすごい魔力がいるはずだ。
そんな奴がグラビティを一秒だけしか使えないってのはおかしすぎる。
そしてやっぱり魔方陣を使って召喚していた、わざわざ魔法かなんかで地中に描いて。
地中に書いているから召喚するときに発生する光が表に出てこないからなかなか発見されない。
今は栞の一撃で地表がえぐられているから光が表に漏れたんだろう。
「ということは何かが召喚されるんですか」
「多分そうだ」
そしてネロが生きていることが確実なものになった。
「な、何かが現れます。あ、あれは……」
「ドラゴン……」
栞と香里が呆然と見ている。
「ぐぉぉぉぉぉ!!!」
召喚されたドラゴンは体長6m近くある中〜大型のドラゴンだ。
しかもこれはドラゴンの中でも強い方に分類されているゴンドラゴンじゃないか。
そのドラゴンが雄たけびをあげる。
凄いプレッシャーが襲い掛かる。
「あ、あぁ……」
俺と真琴と天野以外は足が竦んですぐには動けそうに無い。
ゴンドラゴンは知能が高くて人の言葉が分かる珍しいドラゴンなのにいきなりこんな所に召喚されて怒っている。
ネロが操っている可能性は薄い。さっきの事から連想するとこれを操れるほどの魔力はネロには無い。
まさに、追い詰められて起こした自棄だな。
そしてドラゴンが俺たちに向かって歩き出す。
どうする、逃げることは出来ない。
ネロの制御がされていないということはこのまま俺達が逃げ出すと城や街に被害が及ぶ。
騎士団はまだ前にネロが召喚した魔族と戦っているはずだから余計に無理だ。よって増援も無理だな。
だからといって今の俺達だけでは勝てない。
じきに少しずつでもプレッシャーに慣れてみんなも動けるようになるだろう。
けど、先の戦闘で名雪達や真琴、天野はかなり消耗している。
いくら久瀬、斉藤、一弥が強くても北川と今の俺を含めた5人では勝てない。
名雪達が全開ならどうにかなってたかもしれないが。
と、なるともう方法はこれしか残っていない…か……
さっき、まだ名雪達には隠しておこうと思った直後なのにな。
けどもうみんなを守るにはこれしか残っていない。
そして俺は両手の手袋を外した。
<香里視点>
あ、あれがドラゴン。魔物の中でも最上位に存在されていると言われている。
ものすごいプレッシャー。
怖いという気持ちは思ったよりも無い……はず。
けど足が動かない。
ど、どうする。このままだと全滅よ。
すると相沢君が急に手袋を外し始めた。
まずは左手、あれ何ともなってない。
相沢君は確か昨日見せれる状態じゃないって言ってたのに……
そして今度は右手を外す。
「!!!!」
う、嘘、何で、あれは……魔王の手ライカンスロープ!
相沢君が今、人間界に現れたといわれている魔王なの……
「さあ、早くケリをつけないとな……」
あとがき
どうもお待たせしました。第21話です。
祐一「遅い!」
す、すいません。
祐一「三ヶ月だぞ三ヶ月。もう忘れ去られている可能性も大なんだぞ」
すいません、三月は春休みで遊びすぎてそのあとは大学の二年に慣れるのとスパロボインパクトに費やしてしまって。
で、それを攻略する前にMXが発売してしまってそれをやってまして。
祐一「それでもちょっとずつでも書けただろ」
それが五月の始めぐらいに書き始めたのですが久しぶりのため書けなくなってまして。
ようやく何とか今日書き上げることが出来ました。
祐一「で、今回の話はどうなんだ」
え〜と、最初の予定ではもうちょい先まで進む予定だったんですが。
長さ&6月6日のこのHP6ヶ月目記念に間に合わすためにここで切ることにしました。
タイトル通り(?)魔王も現れたしいいかなと。
祐一「で、その魔王は俺なんだな」
はい、そうです。一番最初と比べてそこまでに至る道筋が少し真面目になりすぎたのでどう収集つけようか少し悩んでますが。
はじめはもっと「おきらく極楽ご都合主義」だったのに何処から変わってしまったんだろう。
まあ今でも十分そうなのかもしれませんけどね。
で、今までそのことを隠していって驚かそうと思ってたんですが。
やはりあからさまなのはダメかなと思ってやっていたら十分あからさますぎてばればれだったかもしれません。
と、そんなこんなで何なんですが、次は本当に早めに更新したいと思うので見捨てないでください……
もらえたらかなりうれしいです。
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