バトルフィールドオブチルドレン

第20話 側近の実力


「う……」

 

ここは……医務室?

そうか俺は一弥との試合の怪我で……

 

「……て、名雪は、ネロは?」

「おお、気がついたか相沢」

「石橋先生」

 

ベッドから起き上がるとそこには俺たちのクラス担任の石橋先生がいた。

この先生、戦闘向きのいい体格してるのに医療関係が専門のおかしな先生なんだよな。

 

「いや〜本当に良かった。最初、久瀬隊長殿がお前を運んできたときは驚いたぞ」

 

久瀬の親父さんが俺を……

 

「それで名雪達は――」

 

ドゴォォォン

 

突然、少し離れた所から爆発音が聞こえてきた。

俺は急いで近くの窓を開ける。

爆発があったのはものみの丘のほうか。

すると爆風に乗って知っている感覚がやってくる。

これは魔素……しかもこの感覚からすると天野に真琴!

何であいつらが……それに誰と戦ってるんだ。

 

そんなことを思っていると開いていた医務室のドアの前を久瀬が通りすぎるのが見えた。

俺は急いでベッドから降りて後ろのほうから声をかける。

 

「久瀬ー」

 

けど久瀬には声が届かなかったようで向こうに行ってしまう。

急いで追いかけようとすると反対の方向からこっちに走ってくる足音が聞こえてきた。

 

「斉藤に一弥、それに……北川!」

「おお相沢、話は聞いたぞ大丈夫か」

「大丈夫かってお前のほうこそ大丈夫なのかよ?血みどろじゃないか」

 

俺の目の前にいる北川は頭から赤い液体が滴り落ちていた。

 

「ん、この頭からかかってる赤いのか?これは血糊だ。ったく悪趣味な奴だぜ」

「俺達が見つけたときも驚いたぜ、キリストのように十字に張り付けられていたんだからな」

「ってそうだ、名雪たちはどうなったんだ。それにネロは」

 

すると斉藤が答える。

 

「水瀬さんは無事だ。おそらくこの闘技場の中のどこかにいる。そしてネロはあのあとものみの丘の方向に逃げていった。
そっちの方は今、美坂達が追跡している。で、俺達もこれからそっちの方に向かう所だ」

 

ふう、名雪は無事か。

けど今はそのことよりネロが逃げていった方向だ。

ものみの丘の方向って……じゃあ今、美汐達と戦っているのって、まさか。

 

「俺もそれについていくぞ」

「お前、肩大丈夫なのか」

「ああ、痛みもほとんど無い。さすがは石橋先生だな」

「なら急ぐぞ。久瀬の奴先に行ってしまったからな」

 

そして俺達はものみの丘に向かって走り出した。

いったい何が起こってるんだ?

 

 

 

俺達がそうこうしている時、香里達は……

 

 

<香里視点>

 

「けほ、けほ」

                               エクスプロージョンブリット スマッシャー
あの二人との戦いが始まった直後、栞が大爆発弾を撃砲モードで炸裂させる。

爆風のせいで砂が巻き上がって二人の姿は見えないけれど、これで倒せるまでいかなくてもかなりのダメージを与えれたはずよ。

 

数十秒ぐらい経って砂煙がはれていき辺りが見渡せるようになってきた。

そしてあの二人のいた方向を見る。

するとそこには前面と側面に無数の呪符張り巡らして結界を作り、その中で無傷なままの二人がいた。

 

「嘘……」

「ふう、いきなり強烈な一撃でしたね。お陰で呪符を大量に消費してしまいました。今回持ち合わせが少ないというのに……」

 

あれを喰らって無傷なんて、強い!

でも今のであの美汐って娘の方は符術使いだって事が判ったわね。

符術……呪符といわれる特殊な紙に魔力とは違う気というものを送り込みそれによって様々な効力を発揮する。

今では使い手がほとんどいなくなっている術なのに、まさか魔族で使える者がいるなんてね。

 

「では、次は私達の攻撃とでも行きましょうか。真琴!」

「うん」

 

美汐が呪符を取り出して目の前に翳す。

 

「雷帝招来」

 

その言葉と共に呪符から雷が迸り襲い掛かってくる。

けど、このくらい!

あたしは横に避ける。

すると目の前に手に装備している爪で裂こうとしてきている真琴の姿が見える。

そして危険だと思った瞬間、横からあゆちゃんがきて短剣で爪を止めた。

 

「へぇ、人にもなかなか素早いのがいるのね」

「スピード勝負なら負けないよ」

 

 

 

<美汐視点>

 

「真琴の攻撃が止められましたか。では次、もう一度雷帝――」

「レイビーム」

 

私がもう一度雷を起こそうとすると真横から光のビームが飛んでくる。

急いで私は呪符に送り込む気を変えてバリアを作る。

 

「きゃっ!」

 

けど、即席でしかも一枚で作ったため簡単に貫通して顔を掠る。

 

「あははー、佐祐理達のことを忘れてませんかー」

「……倒す」

「撃ちまくりですぅ」

「早くこの戦いを終わらせて祐一に問い詰めなきゃ」

 

分断されてしまいましたね、その上4対1ですか……

これは少々気を使いますがあれをしたほうがいいですね。

 

私はそう思い服の中から30枚ほど呪符を取り出す。

そしてそれらを上空に投げる。

 

「……出でよ、我が式神!!」

 

手で印をふみながらそう叫ぶ。

すると呪符が眩しくなる位光りだし、その光の中から三体の式神が姿を現す。

一体目は体が無く鎧のみの騎士、二体目は巨大な蛇、三体目は蒼い体をした狼をしている。

名前はそれぞれヘル、ミドガルズオルム、フェンリルと名づけています。

 

「行きなさい!」

 

そして三体の式神が4人に向かっていく。

 

 

 

<あゆ視点>

 

「くらえー、エアーブラスト!」
          スパイラルフレイム
「負けないわよぅ、渦巻く炎」

 

ボクの放った空気の塊と真琴が放ってきた渦を巻いている炎が激突する。

そのぶつかった衝撃の間に真琴の後ろに回りこんで切りかかる。

 

「甘いわよぅ」

 

けど読まれていてジャンプで避けられてそのまま上から攻撃してくる。

 

「あゆちゃん伏せて、ライトニング」

 

香里さんの言葉でしゃがむとボクの上を電撃が通り過ぎる。

そしてそのまま真琴に直撃する。

 

「あうっ!」

 

真琴は少し吹っ飛ばされるけど受身をとってすぐ今度は香里さんの方に次の攻撃をしてくる。

この娘、見た目より打たれ強い。

 

「ちょっと痛かったじゃないのよぅ」

「そう、それは良かったわね。ならもっとお見舞いしてあげるわ……トリックサンダー」

 

トリックサンダーは五本の電撃を対象にむけていろんな方向から放つことができる魔法。

 

「これを避けるのは難しいわよ」

 

そしてトリックサンダーが真琴に当たる。

すると、いきなりその姿が掻き消える。

 

「えっ、何が……」

 

「それは幻よ」

 

えっ!

声が後ろから聞こえてくる。

ボクは急いで羽を出して空に飛び上がった。

けど少し間に合わず腰の上辺りを爪で引き裂かれる。

 

「浅くしか決まらなかったぁー。もう空を飛ぶなんて卑怯よぅ!」

「卑怯といわれて降りてくる人なんかいないもんね」

 

とりあえずボクはここで体勢を整えないと……

 

 

<栞視点>

 

何なんですかあのいきなり現れた騎士と大蛇と狼は!

……って、私達に向かって襲いかかってきてるし〜

 

私のところにやってきたのは蒼い狼さんですね。

とりあえず迎撃です。


フレイムブリット                  スマッシャー
「火炎弾ですぅ〜ってしまった、撃砲モードのままでした」


 ライフル
雷威銃モードで撃とうと思っていたのでいきなり巨大な炎の球が発射されたのとても驚いてしまいました。
    エクスプロージョンブリット
はじめに大爆発弾を使ったときのまま元に戻すのを忘れてましたね。

でも、怪我の功名です。この大きさは避けれないでしょう……って嘘、あの大きさをジャンプで飛び越えた〜

何という跳躍力なんですか。

さすが狼です。

 

と、感心してる時じゃないです。モードチェンジと弾込めを急がないとこのときが私の一番の隙なんですから。

 

早く……早く……

 

ああ、間に合わない。

目の前には鋭い牙がある口を開けてもう飛び掛ろうとしている狼さんが。

 

「ええーい、ままよ」


                          フリーズブリット
自棄になって手に持っている氷結弾を投げつける。

すると本能的か狼さんはそれを歯で噛んで止めた。
      フリーズブリット
その瞬間、氷結弾がはじけて牙が凍って砕け落ちる。

狼さんはそれで私に襲い掛からないで上を通り過ぎて体勢を整えるかのように距離をおく。
                         ライフル
そしてようやくモードチェンジが完了して雷威銃モードになった。

た、助かったですぅ……

 

 

<佐祐理視点>

 

こ、これはちょっと巨体すぎますね……

佐祐理の前には体長10メートルぐらいある大蛇が今まさに牙を向こうとしている。

符術でこんなことまでできるなんて相当な腕の持ち主ですね。

式神は元が紙ですけど水に弱いということもないし。

 

「喰らいなさい、チャクラム」

 

チャクラムをブーメランのように投げる。

 

キンッ!

 

え……

硬すぎですよー、傷一つつけれず跳ね返されるなんて。

なら魔法です。中途半端な武器攻撃は通用しません。

 

「レイビーム」

 

光を収束したビームが飛んでいく。

 

パシッ!

 

これも効かないんですか!

 

「これはどうすれば……きゃあっ」

 

長い体を利用して急に横から尾で薙ぎ払われる。

佐祐理は数メートル跳ね飛ばされて草むらに倒れる。

これはいよいよピンチですね。

 

 

<舞視点>

 

「……覚悟!」

「あの三体の間を抜けてやってきましたか。残り呪符が少ないから気をつけないといけませんね」

 

そして私は剣で切りかかる。

美汐はバックステップで避けて呪符を取り出す。

 

「風華招来」

 

……くっ、突風か。

けどこんなもので。

 

「はあぁぁっ」

「今度は捕らえた」

「くっ……」

 

私の剣は相手の左肩を切り裂く。

 

「まさかあの突風を突き抜けてやってくるなんて……あれ、あなた先程より髪の毛が蒼くなってきてませんか、それに目も」

「…………」

「そうか、あなたあれですね。魔族との混血、人と魔族から生まれた子供は全て蒼髪、蒼眼になる。
そしてそこからまだ代を重ねて人の血が濃くなってくるとある条件を満たす時のみ蒼髪、蒼眼になる。
一般には知られてませんけどね。そしてあなたはどうやら本気で何かをすることが変化の条件のようですね」

 

そう、確かに私の母方のおばあちゃんは魔族だった。けどとても優しくてそんなことはどうでもよかった。

そしてそのおばあちゃんの娘だったから私のお母さんはきれいなほどの蒼髪、蒼眼だった。

けど、私はそこにお父さんの人の血が混ざって普段は普通の黒髪と黒の瞳だった。

 

「そのせいでいじめられたりしてたんじゃないのですか」

「……だから?」

「だからって……人が憎くないんですか?何故人の味方をするのです」

「……昔はそういう時もあった。けど今は私に魔族の血が流れているのを知っていても親友だといってくれる友達がいる」

 

佐祐理や祐一がそう。

 

「いい友達を持っているのですね。ならやはり力ずくになりますか」

「……私は、負けない」

 

 

<名雪視点>

 

目の前には鎧のみで剣を持っている騎士がいる。

……どうやって戦えばいいの。

とりあえずわたしの鞭は直接は効かないよね。

魔法も……効くのかな?

腐食や溶かすことができる魔法なら効きそうなんだけどまだ使えないし。

弱点がわからないよー

こうなったら……

 

「逃げながら攻略法を考える!」

 

と、いうことでわたしは回れ右をして走り出す。

すると後ろから鎧が走ってくる音が聞こえてくる。

やっぱり追いかけてきてるよー

このままでは考える間もなくつかまっちゃう。

よーし、なら障害物を。

 

「連続アイスウォール」

 

そしてわたしの真後ろに氷の壁が幾重にも重なってできる。

 

「これだけ大量に張ったらあの剣でも相当時間がかかるはずだから今のうちに――」

 

ドガーン!

 

え、何、爆発?

後ろを見てみると氷壁が破壊されていた。

そして鎧の手からフレイムボールが現れる。

あの鎧魔法まで使えるのー!

ピンチだよ。これじゃいくら氷壁を張っても壊されちゃう。

 

「何をやっているのですか、水瀬君……というか何故ここにいるのですか」

「久瀬君」

 

わたしがあたふたしていると久瀬君が現れた。

 

「やっぱりみんなにばかり危険な目に合うのは嫌だから……と、そんなことより久瀬君がきたってことは北川君は」

「あいつならぴんぴんしてましたよ、あとから斉藤達とやってきます。それよりもこれはいったいどうなってるんですか」

「とりあえずわたしの目の前にいる鎧とあそことあそこにいる二匹は式神で、
あそことあそこの女の子は魔族っていうのはわかってるかな。で、目的は祐一に会うことなんだって」

「うーん、まだよくわかりませんがとりあえず僕の知らないのは敵だということですね。
けど祐一の方はもうすぐここにきますよ。さきほど後ろから祐一の大声が聞こえてきましたから」

「うそっ!」

 

 

<祐一視点>

 

「い、意外に遠いなものみの丘」

 

けどもう少しでたどり着く。

さっきから近づけば近づくほど天野と真琴の魔素が濃く感じられる。

何であの二人が戦ってるんだ。

とにかく急ごう、全てはそれからだ。

 

そして五分もしないうちにそこにたどり着いた……


あとがき

どうもマサUです。

今回はまず、予定の所まで進みませんでしたすいませんです。

実は当初、今回の戦闘シーンは丸ごとカットの予定でしたが、それでは悲しいということでいれてみたらやたら伸びてしまいました。

次は必ず前回の予告の所まで行くのでご容赦を。

そして今回の話ですがここ最近の話に比べて軽くなっています。

というか元々はこれくらいの軽い感じで考えていたのですがいつの間にか普通になってました。

あと視点切り替えも多くなっています。

私的にはそれなりに上手くいってる気がしてるのですが実際はどうなのでしょう?

もし指摘等あればメールや掲示板にお願いします。

それでは21話で。

 

ご意見、感想はこちら掲示板メールにお願いします。

もらえたらかなりうれしいです。

 

  

 

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