バトルフィールドオブチルドレン

第18話 決勝トーナメント後半戦


『さあ、後半戦の時間がやってきました。それでは対戦の組み合わせを発表します。
まずは我が国のプリンセス、そして去年の第三位水瀬名雪選手。それに対するは通称運だけの男北川潤選手。
そしてもう分かっておられるとは思いますが残るもう一試合は甘いマスクで女子に大人気、我がアカデミーのアイドル倉田一弥選手と、
それに対するは我がアカデミーの美女数名にのみ大人気、よく分からない男相沢祐一選手。この二試合になりました』

 

「よく分からない男ってなんだよ」

 

放送にツッコむ。

そして俺は相対する男を見る。

倉田一弥、予選の戦いを見たけど歳のわりにかなりの実力を持っている。

さすがこのカノン王国の古参である倉田家の一人息子だけのことはあるな。

かなりのシスコンだけど。

 

さてどうやって戦おうか。

普通でもきついのに結構治ったけどそれでも酔いがまだ残っている今の状態ではさらに厳しいしな。

とりあえず正面から真っ向勝負を挑んできそうなタイプだと思うからそこら辺を狙っていった方が良いな。

 

そして開始の合図がでて試合が始まる。

 

「まさかあんたとこんなに早く戦えるとは思ってもみなかったよ。てっきり昨日の予選で敗退すると思っていたから。
けどそんなことはいい、相沢祐一、お前が負けたら姉さんに二度と近づくな」

「そんなことなんでお前に決められなきゃならないんだ」

「お前は姉さんに相応しくない!」

 

そういって一弥が俺に切りかかってくる。

俺はそれを剣で受け止め鍔迫り合いになる。

 

「姉さんは将来倉田家を背負わなければならないんだ。だからお前みたいな頭も腕も悪い奴なんかと一緒にすることなんかできない」

「なんか箱入り娘を持つ親父のような発言だな」

「う、うるさい!」

「それにまだ佐祐理さんとはそういう関係になってないぞ。これから先はどうなるかわからないけどな」

「だからそういう芽は早めにつぶしておくに限るんだよ」

 

そして俺は鍔迫り合いに負け後ろにはじかれる。

 

「くっ!」

「やはりお前は弱い。何が何でも姉さんの前からいなくなってもらう」

「そう簡単に負けてたまるかよ」

 

 

 

 

一方名雪と北川の試合は

 

 

<名雪視点>

 

試合が始まってしばらく経ってるけど膠着状態が続いているわたしと北川君。

もう何分ぐらい経ってるんだろう5分ぐらい経ってるような感じがするんだけど、たぶんまだ1分も経ってないんだろうね。

 

ううっ、北川君早くしかけてきてよ。

わたしは魔法主体の戦いをするのにあの槍の効果で迂闊に魔法が使えないんだから。

ほんとに相性が悪い相手と当たっちゃたよー

直接攻撃は武器が鞭だから殺傷能力が低いしもういやだよー

 

とりあえず北川君から動いてこないから効かないの分かってるけど牽制で魔法を使ってみよう。

不意を付かないといけないから言葉を発せずに魔法を使うために頭の中でイメージを作る。

そのイメージは大きな水の球が北川君に向かって飛んでいくというもの。

よしイメージ完成したよ、いけーアクアボール。

そしてイメージ通りにいきなり大きな水球が現れて北川君に飛んでいく。

これで北川君が少しでも体勢が崩れてくれたらそこから攻めていこう。

そう思っていたら北川君は驚くこともなくどちらかというと微笑みはじめた。

 

「残念だったな水瀬、くらえよ」

 

そう言って槍をバットに見立てて野球のボールを打つように水球を打ち返してきた。

 

「うそー」

 

わたしは急いでしゃがんで避ける。

 

「どうだ水瀬、これぞ北川流一本足打法だ」

「魔法を打ち返してくるなんて普通じゃないよー」

「なに、水瀬は俺のこと普通の人だと思っていたのか?」

「いや、そんなことはないけど」

「……そんなにすぐに返事を返されるとさすがに悲しくなるな」

「気にしないほうがいいよー」

「するわっ」

 

 

 

そして試合を祐一の方に戻して

 

 

<祐一視点>

 

「くそ、何で、何で僕の攻撃が決まらない!」

 

さっきの会話のあと一弥が猛攻をかけてきた。

俺はひとまず香里のときと同じように回避に専念する。

そして今の所、全ての攻撃を無傷ではないが避け続けることができている。

 

一弥は動きが洗練されすぎているんだよな。悪く言えばマニュアル化されているともいえるけど。

だから急所附近を気にしていたら難なくとはいえないけど避けることはできる。

けどこっちから攻撃できる余裕がないからどっちにしても不利なんだけど……

 

「そこだ」

「しまった」

 

余計なことを考えていて隙が出てしまった。

そして剣を弾き飛ばされて後方に突き刺さる。

一弥はそのまま俺に向かってくる。

だめだ剣を取りに行く余裕がない。

喰らう!

 

「ぐぅぅ……」

 

一弥の剣が俺の左肩を貫く。

そして剣が引き抜かれてそこから血が吹き出る。

 

「これで僕の勝ちだな」

「ま、まだだ。俺はまだ戦闘不能にはなっていない」

「そうか、まだ諦めないのか。ならここまではしたくなかったけど、とどめをさしてやる」

 

そう言って一弥が剣を構える。

 

これまでか……

 

そう思ったとき今までの比じゃない音量で放送が入る。

 

『緊急事態です。魔物の大群がこの闘技場に向かってやってきています。一般の方は急いで地下にあるシェルターに非難してください。
アカデミーの生徒は戦闘を得意としている者は近くにいる者数名でチームを組んで対応してください。
それ以外の生徒はシェルターの出入り口近くに待機して怪我をした人たちの救護にまわってください。
あと雪王大会は残念ながらこれにより中止ということになりました。振り替え日はありません。繰り返します…………』

 

ネロの奴が動き出したのか、しかもこんなに人が多いところで。

けどある意味助かったな、あのままならもう少しで一弥にやられていた。

 

「魔物か……惜しかったけど仕方ないよな。相沢祐一、早く肩を治してもらってこい」

「ああ、そうさせてもらうよ」

「次はちゃんと止めを刺してやるからな」

「こっちこそ今度は勝つ」

 

そう言って俺は闘技場から降りる。

それと同時ぐらいに周りから「きたぞー!」という声が聞こえてきた。

俺が急いで上空を見るとそこには鳥形の魔物のワイバーンやコカトリスが数十匹いた。

しかもその手には大型の狼の形をしているワイルドウルフがつかまれていた。

そしてそれらの手から離れてワイルドウルフが地面に着地する。

これはちょっとやばいな、数が多すぎる。

 

と、そういえば肝心のネロの姿が見えないな。

奴のことだから直接自分で名雪を襲いそうなんだが。

って、そうだ名雪は!

探してみるとまだ闘技場の上にいて北川と一緒にいた。

とりあえず一安心だな。

でも、間違いなく名雪がターゲットのはずだから避難させていたほうがいいな。

そう思って名雪に声を掛けようとする。

 

そのとき、北川が槍を構えて後ろから名雪を貫こうとするのが見えた。

 

なぜ……

 

俺はあまりのことに声が一瞬でなかった。

まるでスローモーションのように槍が名雪に向かっていく。

 

「名雪、後ろ!」

「え?」

 

俺の言葉が聞こえて名雪が後ろを見る。

名雪も驚きで動けなくなる。

だめだ、ここからは間に合わない。

俺は思わず目をつぶってしまった。

 

そして槍が名雪の体に刺さる瞬間、がきっ、という金属音がなった。

俺がおそるおそる目をあけるとそこには北川の槍を剣で受け止めている香里がいた。

 

 

<香里視点>

 

ふう……何とか間に合ったわね。

あと一秒遅かっても間に合わなかったかもしれない。

そして北川君はは名雪殺害を失敗して悔しそうな顔をしながら少し後退する。

 

「大丈夫、名雪」

「う、うん……大丈夫だよ。ありがとう香里」

 

よかった、驚きのせいで焦点はまだ完全にあってないけど意識ははっきりしてる。

名雪の無事を確認したあたしは北川君を睨みつける。

 

「北川君、どういうつもり。今何をしようとしたか分かってるの!」

「へっへっへ……わかってますよ」

 

北川君の口調が一気に変わる。

この話し方は……

 

「ネロか!」

 

あたしの後ろから相沢君の声が聞こえてきた。

 

「はい、そうですネロです。いやはや、まさかこの作戦を失敗させられるとは思いませんでしたねぇ」

 

そういって北川君―ネロ―は首の所に指をかけて引き上げる。

すると北川君の顔のマスクがはがれて昨日見たいやらしい顔がみえた。

 

「それは残念だったわね。女王様から名雪のことをガードをお願いされていたのよ」

 

そう、昨日の内にね。

 

 

 

昨日、あたしに貸してくれた部屋にもうそろそろ寝ようと思ったとき秋子さんがやってきた。

 

「香里さん、ちょっとお願いがあるんです」

「はい、いいですけど何でしょう」

「実は、名雪のガードをお願いしたんです」

「名雪の……ですか」

「そうです。私の予測だと明日また名雪を狙ってくると思うのです。特にトーナメント開催中に狙われる可能性が高いと思われます。

そこで明日、言い方悪いかもしれないけどトーナメントに出場していなくて手の空いてる香里さんにお願いしたいのです」

「分かりました。けど何であたしなんでしょう、他にも久瀬君や斉藤君もいるはずなのに」

「それはですね。香里さんが剣術、魔法両方ともバランスよく使いこなせて、その上格闘術も習っていてあらゆる状況に対処できるかと思ったからです。それにあの二人はお酒の飲みすぎで酔いつぶれているのでお話できないというのもあるんですけど」

 

これが昨日、あたしが秋子さんとした会話。

 

 

 

「そうでしたか。昨日のあのときに手持ちのカードを見せすぎたのが今回の敗因ってワケですねぇ」

「それよりも本物の北川君はどうしたのよ」

「ああ、あの方ですか。この槍の持ち主の。そうですねぇ、もうこの世に未練を残して空の彼方へ行ってしまいましたか。たしか」

「なっ!!」

 

そんな北川君が……

 

「へっへっへっ、怒りましたかぁ。まあ安心してください、今のは冗談です。本当はどこかのトイレで眠っていますよ。
いつもなら迷わず殺ってるんですけどねぇ。なぜか気まぐれを起こしてしまいましてね、今回は気絶させるだけにしておきました」

 

よかった。何というか北川君の強運もここに極まれりって感じね。

 

「さて、いつもなら失敗した時点で退散するわけですが、今回はワタシの方が物量で勝っているので退散は無しです」

 

ネロが笑みを浮かべながら言う。

 

「甘いわね。名雪が狙われているのが判っていてあたしだけをガードにつけると思っているのかしら」

「なに」

「さて、もうそろそろ来る頃じゃないかしら」

 

すると馬の蹄の音が鳴り響いてきて男達の気合の声が聞こえてきた。

そしてその男達が一斉に闘技場内に入ってきて次々と魔物達を切り裂いていく。

王国騎士団の到着ね。

 

実はさっきの話にはちょっと続きがあったの。

 

さっきの話の後秋子さんがこう言ったの。

 

「あとそれと今日の魔族は魔物を召喚し操る能力を持っているようなのでもしものために王国騎士団を出撃体勢で待機させておきますね」

 

 

まあ、そんなことはどうでもいいわね。

それよりも……

 

「これで形勢逆転ね」

 

今度はあたしが笑みを浮かべてそう言った。


あとがき

どうもマサUです。BoC第18話でした。

祐一「おい、今回俺いいとこ無しじゃないか」

う〜ん、そうなるね。

とりあえず今回は祐一と一弥の決着はつかないことと北川は勝ち残らない、大会が途中で中断になるということが決定してたので。

そこら辺を上手くつなげようとしたらこんな感じになってしまいました。

祐一「なんか最後の方は香里が主役っぽいし」

それは私もそう思ったのでもうちょっと君のセリフを増やしてあげたかったんだけど思い浮かばなかったんだよ。

あと一弥なんだけど、なんか性格がはじめと変わってるような感じがしてるけど大丈夫だよね。

まあ、とりあえずようやく物語が進んできたのでよかったなと思っています。

祐一「じゃあ、次は19話だな」

 

ご意見、感想はこちら掲示板メールにお願いします。

もらえたらかなりうれしいです。

 

  

 

戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送