バトルフィールドオブチルドレン

第15話 帰り道、そして……


「つ、疲れた……」

 

Hブロックが終わって30分、香里とのキスの件やっと全員に納得してもらった。

名雪達には香里を助かるためだったんだと説得して喫茶店で好きな物を奢るということで決着した。

北川はあの後「俺の美坂に何をする」というせりふを言って香里に轟沈させられた。

そして当事者である香里は一回軽く叩かれただけで特に何もされなかった。

逆にちょっと機嫌がいいように見える。

 

ああ、それにしても今月の小遣い、これでほぼ無くなったな。

あいつら好きな物に関してだけ限界が無くなるからな、見てるこっちが胸焼けしそうなほど食べるし。

まあ今さら何をいっても仕方ないか。

 

そんな疲れきって休んでる俺のところに名雪がやってくる。

 

「祐一、何こんなところで休んでるの。早く百花屋行こうよ」

 

百花屋とは城下町の外れにある俺たち御用達の店だ。

 

「何いってんだ、このあと決勝トーナメントあるんだろ?」

「今日はこれで終わりだよ、決勝戦は明日。昨日ちゃんと説明したよ」

「いやそれは確実に聞いてないぞ」

「そうだっけ」

「はぁ、もういい分かった。じゃあ行くか」

 

 

 

 

「そういえば、祐一君っていつもそのグローブしてるね」

 

百花屋に行く途中あゆが言った。

 

「おう、まあな。これは俺のお気に入りだからな。でもどちらかというと手袋なんだけどな、皮の」

「でもよ、相沢。去年のプールの授業の時も着けて入ってただろ」

「祐一さん、それプールのときまでつけてたんですか」

「そういえばそうだったわね。あの時は違和感ありありだったわ」

「なら本当のことをいうか。実は魔界にいてたときいろいろあってな、見せれるような状態じゃないんだよ、得に右手がな」

 

そう見せることが出来ない。この右手だけは、まだ……

 

 

 

 

「ん?舞どうしたの」

 

佐祐理さんの声で見てみると舞があちこち辺りを見回していた。

 

「……何か聞こえる」

 

何か聞こえる?

耳を澄ましてみる……確かに何か聞こえる。しかもこっちに近づいてくる。

何だ、何の音だ。

……羽音!しかもこれは!

 

「みんなしゃがめ」

「祐一さんどうしたんですか」

「いいから早く」

 

そして全員がしゃがんあと、すぐに俺たちの頭上を大量の羽音が通り過ぎる。

 

「……通り過ぎた?」

「みたいだな、けどこれで終わりそうに無いな」

「どういうこと祐一」

「あそこだ名雪」

 

そう言って俺が指を刺す。

そこには今さっき通り過ぎた羽音の正体である、魔物キラービーの大群があった。

キラービーとは簡単に言うと魔物バージョンの蜂だ。大きさが50cm位ある。

 

「そんな、こんな所に魔物が入り込んでくるなんて」

 

栞が驚き叫ぶ。

 

でも驚くのも無理ないな、他のみんなも叫んではないが驚いた顔をしている。

俺もそうだ。この国の特に城と城下町の周囲には強力な結界が張っていて何人たりとも通さない仕組みになっている。

だからここに入ってくるにはそこにある関所を通ってくるしかない。

その関所だけ結界を張っていないからだ。

なので普通この城下町まで魔物が入り込んでくるなんてことはまず無い。

あっても関所を通ってきているのですぐにこの国の騎士団か勇者に情報が回って退治される。

けど今ここに魔物がいて情報が回っているようにも見えない。

 

 

「栞、驚いてないでとりあえず今は目の前にある虫達を倒すわよ」

「は、はい」

「わたしがサポートするからあゆちゃん前衛お願い」

「分かったよ名雪さん」

「頑張ろうね、舞」

「はちみつくまさん」

「予選で特訓の成果を見せたからな、もう隠す必要なんて無い。男北川、全力でいくぜ」

「久しぶりの魔物との戦いだ、俺も気を引き締めていくか」

 

そして俺たちはキラービーの大群に向かっていった。

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

香里が栞のすぐ前方に立ち近づくのを切り落としていく

 サイバーライフル スマッシャー                                   ライトニングブリット
「砕破雷威銃、撃砲モードに変形完了しました。お姉ちゃん退いてください。いきます雷電弾」

栞は香里が時間稼ぎをしてくれているうちに大技を出す。

 

「いくよ、アイスニードル乱れ撃ち」

そして名雪は魔法で打ち落としていく

 

「撃ち漏らしたのはボクにまかして。空に逃げたって無駄だよ」

あゆは名雪の魔法に当たらなかったのを的確に倒していく。

 

「せいっ」

「舞、後ろ!えいっ」

「……佐祐理、助かった」

舞は両刃の剣を佐祐理さんはチャクラムを両手に持ってお互いを補いながら一匹一匹倒していいく。

 

そして俺と北川はあまり活躍していなかった。

 

「くそ、相沢なんで俺達の周りには近づいてこないんだ」

「分からん、とりあえず俺らの所に来ないんだったら、こっちから行くしかないだろ」

「俺達は戦力に入ってないと思われてるようで腹が立つぜ」

 

俺はそこまでは思わないが確かにおかしい。

キラービーはそもそも人を襲うことすらほとんど無い。自分達に危害を加えない限り襲ってこない魔物な筈だ。

それに移住をめったにしないので魔界から出てくることもあまりない。

さっきのことも含めてどうやって誰にもばれないでこの街に入って来れたんだ?

そんなことを考えながら戦っていると何か違和感を感じた。

いつの間にかバラバラに戦わさせられている!始めはある程度固まって戦っていたはずなのに。

しかも名雪だけが孤立している。

するとやはり名雪にキラービーが集中して襲ってくる。

けど名雪は前の方にいてるキラービーに気を取られて気づかない。

 

「名雪危ない!」

「えっ」

「くそっ、間に合え氷針盾」

 

俺は右手を一触りして魔法を使った。

名雪の周りに表面が氷の針で覆われた壁が現れる。

キラービーはそれに激突して串刺しになっていく。

アイスニードルの応用版だな。

 

「祐一ありがとう、助かったよ〜。けど祐一こんな魔法使えたんだね、結構難しいはずと思うけど」

「そ、そうだな、俺も無我夢中やっただけだったからちょっと驚いてるよ」

「まさに火事場のクソ力ってやつね。なんか声が少し上ずってるのが気になるけど」

「か、香里か」

「一匹残らず倒したわよ。それにしても名雪ごめんね。偶々だろうけどまさか名雪が孤立させられていたなんて気づかなかって」

「ううん、いいよ。ぜんぜん大丈夫だったし」

 

ふう、これで一応は一区切りついたな。

 

「さてこれで終わったことですし百花屋に行きましょうか」

 

佐祐理さんが言う。

 

けどこれで終わりじゃない、今の名雪のことで何でこんな所に魔物が出てきたかやっと分かった。

 

「佐祐理さんまだだ。どこかで見ているんだろう、姿を現したらどうだ」

「祐一さん、何を言って……」

「さっきのあれは偶々なんかじゃない、わざと俺たちは名雪が孤立するように誘導されたんだ。
そして確実に名雪だけをターゲットにしていた。あのキラービー達は誰かに操られていたんだ。
ならこんな所に騎士団やハンター達にも気づかれずに現れるのも分かる。
あのキラービー達は召喚されたんだ。そしてそんなことが出来るのは魔族だけ……」

「え、魔族、そんな……」

 

名雪が驚愕する。そして他のみんなも。

 

 

「へっへっへっ、よく分かりましたねぇ」

 

声が聞こえる。そして俺達の目の前かゆっくりとこちらに歩いてくる人が現れた。

背中が丸くなっていてぼろぼろの服を着ている。

そして話し方の割には声も顔も体も若い。

 

「誰だ」

「そうですねぇ、ネロと言っておきましょうかぁ」

 

そう下卑た笑みを浮かべながらネロとかいう奴が言う。

 

「なぜ名雪を狙った」

「さあ、ワタシはクライアントに頼まれただけですからねぇ」

 

頼まれただと……

 

「ちなみにそのクライアントが誰かは教えられませんよ、へっへっへ。
とりあえずワタシの想像より遥かにアナタ方は実力があることが分かりました。
次はもう少し作戦を練ってきましょうかねぇ」

「逃げる気か!」

「当り前でしょう。流石にこのままでは多勢に無勢ですからねぇ。今回ワタシが姿を見せたのは単なる顔見せですから」

 

そう言ってネロは後ろに下がろうとする。

けどもう遅いんだよなこれが。

 

「……そういうわけにはいかない」

「もうあなたは取り囲まれています」

「さてクライアントの名前を吐いてもらいましょうか」

「おやおや何時の間にか囲まれていましたかぁ。これは少しやばいですかねぇ」

 

そんなことを言いながらもネロは笑みを崩さない。

 

「へっへっへ、なんてのは冗談です……グラビティー」

「しまっ」

 

俺達はネロの魔法、グラビティーで一瞬動けなくなる。

まさか重力を操る魔法が使えるとは。

 

「ワタシの魔力では一秒ぐらいしかアナタ達の動きを止める事は出来ませんが、逃げるにはそれだけあれば十分です」

 

そう言ってネロがジャンプすると、どこからとも無く鳥形の魔物ワイバーンがやってくる。

 

「それでは皆さんまたお会いしましょう。へっへっへ」

 

そしてそのままネロを捕まえて飛び去っていった。

 

「逃げられたか、けど全員無事でよかった」

 

そう言ってみんなのほうを向く。

するとあゆ以外の全員が急に地面に座り込んだ。

 

「み、みんなどうしたの」

 

あゆがそれを見て驚く。

 

「いやちょっとね。安心したら腰が抜けちゃって」

「わたしもだよー」

「……初めての魔物との戦いで流石に緊張した」

「佐祐理もです〜」

「おまけに疲れてくたくたですぅ」

「ああ、死ぬかと思ったぜ」

 

そうか全員魔物や魔族との戦闘は初めてだったのか。

確かにあれは今までとは違って命がかかっているからな。緊張するのも無理はないか。

けど魔族ネロか……魔物を召喚してしかも操ることが出来る。

ということはどちらかというと上級に分類されるはずだ。

これはやばくなってきたな……

まあそんなことより今はこの腰が抜けてる六人をどうするかだな。

道のど真ん中でいつまでも座り込んでいるわけにもいかないし。

どうしようか。

 

「おーい、相沢ー起こしてくれー」

 

……なんにせよ北川だけは置いていくか。

 

 

 

 

 

その頃カノン城から数百メートル離れた関所で……

 

「ここにネロがいるの?」

「私が聞いた情報ではこのカノン王国にいるはずです」

「なら、とっとと任務を終わらせて帰るわよぅ」

「いいえ、任務が終わったらついでに人探しをします」

「誰を探すの?」

「あの人ですよ。確かあの人の生まれ故郷がここだったはず。ならここにいる可能性が高いはずです」

「アイツの故郷ってここだったっけ」

「何言ってるんですか、あなたの故郷もここでしょう」

「そうだったわね。けどアイツがここにいるのか……」

「あくまで可能性ですけど」

「もし、いたらどうする?」

「それはもうそれなりの事をしないといけませんね」

「明日の朝日は拝めないぜって感じね」

「そうですね。待っていてください……相沢祐一」

 


あとがき

どうもマサUです。今回は思ってたより早く書けました。

祐一「おい!」

おっ、祐一か、前回大丈夫だったか。

祐一「大丈夫な訳無いだろ。何で助けてくれなかったんだ」

いや〜あれは無理でしょう。D型装備なしでマグマの中に飛び込むようなものだぞ。

祐一「それはまあそうだけどな。ところでこの話のヒロインは香里に決定したのか?」

それはまだ決定してません。けど香里は私の好きなキャラクターなので他の人達よりは良い目にあうかもしれません。

祐一「そしてなんかネロとか言う奴が現れたけど」

はい、前回の終わりに話してた人の片方ですね。この人も全く予定していなく急きょ出来た人です。

祐一「なら、やっぱりこの先の展開は……」

どうなるかさっぱりです。

祐一「そして最後に出てきた二人組は」

う〜ん、なんかもうばればれのような気がしますがまだ内緒と言うことで。

祐一「じゃあ最後に次の話はいつ頃に」

それは……近いうちにってところで、それでは!

祐一「逃げたか」

 

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