バトルフィールドオブチルドレン

第14話 雪王大会予選終了


『さあ始まりました最終Hブロック。ここでの注目の選手はもちろん去年のベスト4美坂香里選手です』

 

さて始まったな。

当分香里のところに人が行くだろうしランクDの俺は当分暇かだろうな。

そう思って少し気を抜いていたら俺の斜め前方から風の刃が襲い掛かってきた。

俺はそれを横に避ける。

それがきた方向を見ると手前に一人後ろに二人こっちを向いていた。

見知った顔だった。

俺が香里や名雪、佐祐理さんや舞や栞と友達だということが気に入らなくて時々現れては俺につっかかってくる3人組だ。

特に実戦訓練ではよく試合形式で戦う羽目になっている。

 

「よく避けたな、相沢祐一」

「だが、川澄さん達をお前の魔の手から救うために」

「お前を倒す!」

「言うね、なら倒してみるんだな。今まで俺に一度も勝ったことがないのに」

 

俺はわざとにやけた顔でいう。

そう、俺はこいつらに負けたことがない。

でも、勝ったこともない。

なぜなら……

 

「うるさい、それはお前が逃げ回っているせいだろうが」

 

というわけだ。

 

簡単に言うと攻撃を避けまくって時間切れになるまでまつ。

一応筋力が衰えない程度の訓練はしているから避けるのは簡単だ。

なんせこっちはこれでもここに帰ってくるまで、死が付きまとう魔物とかとなんども戦ったことがあるからな。

結界のおかげで死がないここで、しかもその恩恵におんぶにだっこなやつらの攻撃は読みやすい。

けどこの戦闘では時間切れがない上、香里のこともあるから逃げまくるということもいかないしな。

どうするか……

 

と、考えていると3人組の後ろから人が吹っ飛んできてそいつらを巻き添えにして場外に落ちてしまった。

 

「ラッキー?」

 

飛んできた方向を見ると予想はしていたが香里が戦っているところからだった。

おそらくぶん殴ったんだろうな。

一所懸命戦っている。

 

 

それからかなりの時間が経った。

そして闘技場にに立っているのは俺と香里だった。

 

「よく、残っていたわね」

「誰かさんの所へ人が集まっていったおかげでね。それに逃げ足だけは得意なんだよ」

「自慢にならないわね」

「まあな」

「けどもう一対一、逃げることは出来ないわよ」

「さあ、それはどうかな」

 

昨日の夜、名雪に教えてもらったルールの中の一つ、あれさえ上手くいけば。

 

「どういうこと……まさか、あの特殊ルールを狙っているの」

「そう、あと5分ぐらいで一時間経つからな。それまで逃げ切れればなんとかなるかもしれない」

「ならそれまでにあなたを倒す」

 

そして香里が攻撃を仕掛けてきた。

くっ、やはりBランク以下と攻撃の鋭さが違う。

回避に専念してもやっと交わせる程度だ。

やはり今の俺の状態じゃこの程度なのか。

 

でも、あと少しだ。それで勝てる可能性が出てくる。

あと2分……1分……

 

「まさか相沢君が回避に専念してるとはいってもここまで避けられるなんて。だめ、間に合わない」

 

『ついに一時間が経過しました。ここで特殊ルール発動です』

 

放送が入り闘技場が発光する。

そして数秒も経たないうちに光が収まる。

これで特殊ルールが発動した。

 

「これで迂闊に動けないわね」

 

その内容とは、この闘技場は床が盤の目になっていてその目の中の四分の一ぐらいにランダムで魔法のトラップがかかるというものだ。

その魔法は攻撃魔法から回復魔法までさまざまだ。

これは時間がかかって次のブロックの開始時間が遅くならないために作られたものらしい。

けど、逆に香里が言っているように動けなくなってより遅くなる気がするんだけどな。

まあ、いいか。

それより香里があまり動けないこのチャンスにこちらから攻撃を仕掛ける。

これでも北川には負けるけど運はいいほうだと思う。

だから四分の一の確率なんか当たってたまるか。

 

「いくぞ」

 

俺は香里に向かって剣を構えて飛び出す。

 

「きたわね、ライトニング」

 

しまった魔法か。

動けなくても魔法は使えるんだった、なぜ気がつかなかった。

ライトニングは三本の電撃が相手を襲う魔法だ。

 

「くそ、ならファイアーボール」

 

俺もなんとか立ち止まって魔法で応戦する。

そして二つは激突して……爆発。

 

「うおっ」 「きゃっ」

 

香里と思っていた以上に接近していたため二人とも爆風で飛ばされる。

俺は上手く体をひねって受身を取って立ち上がった。

そして香里も同じく受身を取って立ち上がろうとする。

そのとき香里がいる地面が光る。

 

「しまった、トラップに!」

 

香里が叫ぶ。

よしこれで攻撃系の魔法なら今は無防備な状態だからまともにくらってかなりのダメージを受けるはずだ。

が、何も起こらずすぐに光が収まる。

そこから香里が顔を伏せた状態で現れる。

もしかして回復魔法だったか、ならかなりやばいぞ。

そう思った瞬間、香里が顔をあげてこちらを見る。

そしてそれと同時に恐ろしいまでの殺気が俺を襲う。

明らかにさっきの香里と違う。

 

「おい、どうしたんだ香里」

 

俺が話し掛けるが香里は何も言わない。

そしていきなり剣を振り上げ攻撃を仕掛けてきた。

かなり大振りな攻撃だ。

俺はそれを避ける。

そのとき香里の顔を見る。

すると香里の目に光がない。

そしてすぐに香里の追撃がくる。

やはりそれも大振りな攻撃になっているのでそこそこ避けれるが当たったらかなりやばい。
                              バーサーカー
もしかしてこの症状、さっき香里が喰らった魔法って暴走か!

あれは人を闘争本能の塊にするものだ。

よりによってこんな魔法にかかるなんて。

これを元に戻すには命を消すか気を失わすか、その人にとって気を失いかねないぐらいのショックを与えるしかない。

魔法の中にこれを治すのもあるけど使えないし。

もちろん一つ目の方法なんか結界の効力があるにしても論外だしな。

二つ目も一撃で気を失わせる自信がない。あの状態で長いこと接近することなんて出来ないし。

となると三つ目か……

けど、香里が気を失いかねないぐらいのショックってなんだ、しかも今この場で出来ることって。

 

「うおっ」

 

くそっ、いくら暴走しているといっても香里だな学習してきてきてる。

少しずつ振りが小さくなって避けるのがきつくなってきやがった。

どうすれば、何をすればいい……この聞き分けがなくなってしまったようなこの状態を治すには。

 

ん? 聞き分けがない?

そういえばあいつが昔こんなことを言ってたな。

 

『相沢さん、聞き分けがなくなっている女の人を大人しくさせるには――をしたらいいですよ。私ならなりますから……相沢さんにされたら』

 

う〜ん、思い出してみると恥ずかしいしちょっと違うような。

けど、もう他にすることがないしこれに賭けてみるか。

もう闘技場の端に追いやられてきたし。

 

「香里、正気になったあと俺を恨むなよ」

 

そう言って香里が剣を振り下ろしたのを避けて次の攻撃に移る瞬間に接近する。

そして香里の頭と腰に手をまわして――キス――をした。

 

「「「「「あーーーーーーー」」」」」

 

遠くから名雪たちの叫び声が聞こえる。

そしてみるみる香里の目に光が戻ってきた。

それと同時に顔が赤くなっていく。

 

「…………ん、んーんーー」

 

よし意識が戻った。

それと同時に手足をばたばたさせて暴れ出す、やばいこのあと殺される。

もうこうなったらとことんいくか。

そしてそのままディープなキスに移る。

 

「んーーーーーんっ…ん……」

 

舌を絡ませていくうちにだんだん大人しくなっていく。

それを感じると俺はゆっくりと顔を離しすと香里はぺたんと地面に座り込んでしまった。

腰が抜けたのかもしれない。

 

そして審判のほうを見る。

するとぼーっとしてた顔が素に戻ってこっちのほうをよく見直して手を上げる。

勝敗決着の合図だ。

 

『…………おっとすいません、前代未聞の勝ち方で相沢祐一選手が優勝候補の美坂香里選手を破って決勝進出です』

 

それを見て放送も入った。

これで結構作戦も狂ってしまったけど決勝進出だ。

 

「相沢君、あとで覚えてなさいよ」

「わ、忘れて欲しいんですが」

「それ本気でいってる?」

 

その笑顔が怖いんですが。

 

「ゆーーーーいちーーーー」

「ぐはぁ」

 

な、名雪か。

 

「祐一君さっきのはどういうこと」

 

あゆもか、急にどうしたんだ。

 

「ぐしゅぐしゅ、祐一のばか」

「祐一さん佐祐理にもしてください」

「そうですお姉ちゃんだけずるいです」

 

みんなもきたのか。

 

「くぉらぁぁーー相沢ーーーー貴様よくも美坂にキスしたなーーーー」

 

き、北川まで、そうか周りみんなに見られてたんだった。

そういえばさっき叫び声が聞こえてたな。

やばい、流石の俺も恥ずかしくなってきた。

それにこの場をどうやって収めればいいんだ、俺。

 

 

 

 

 

その頃、観客席の片隅で二人の男が話をしていた。

 

「へっへっへっ楽しそうにしてますねぇ。あの中にいるあの人を殺ればいいんですね」

「そうだ。よろしく頼むぞ」

「分かってますよ。で、周りにいる連中も殺ってもいいんですかねぇ」

「別に殺してもかまわん。ただし連中のほとんどがかなりの腕を持っているからそれだけは気をつけろよ」

「ワタシを誰だと思ってるんですかぁ。これでも魔族の中でも忌み嫌われてる存在なんですぜぇ」

「分かっておる。だからわざわざ危険を冒してお前を雇ったんだからな。けど忘れるな、あくまであいつを殺るのが仕事だからな」

「はいはい、分かっております。期間は三日間ですね。なら早速準備に取り掛かりますんで」

 

片方の男が去っていく。

 

「これが成功すればこの国は……あーはっはっはっはっ」

 

そして残った一人は高らかと笑い声を上げていた……

 


あとがき

 

どうもマサUです。ようやく予選終了しました。

………………

あれ今回は誰もこないな。

ああ、向こうで言い争ってるよ。

え、いや祐一、こっちに助けを求めるような目をされても何も出来ないぞ私は。

あ、向こうに連れて行かれた、なら今回は一人でやりますか。

 

それじゃあ今回の話ですが……きつかったです。

まずはじめに北川の戦いをまじめに書きすぎて祐一の戦い方がセコく映るんじゃないかと心配になりました。

けどこの戦いだけは初めから考えていたことだったんで変えたくなかったのでそのままいきました。

また何か起こりそうですがそれはまた次回以降ということで。

 

あと最後に出来れば感想くださいお願いします。

叱咤激励、批評、あーしてほしいこーしてほしい、なんでもいいですので。

 

感想はこちら掲示板メールにお願いします。

 

  

 

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