バトルフィールドオブチルドレン
おまけその2 短編 バレンタイン
これは祐一が魔王になった後、そして人間界に帰ってくる前の話です。
<美汐視点>
「さて、今日の晩御飯は何にしましょう?」
魔王の側近の雑務を終わらした後、私は晩御飯の材料を買いに出ていた。
「昨日はアレだったですから今日はコレにしましょ――痛っ!」
そして歩いていると空から何かが私の頭に直撃した。
少し涙目になりながらその何かを拾う。
「本のようですね、タイトルは『バレンタインにあげよう、チョコの作り方』ですか。
どうやら魔界の穴から落ちてきた人間界の物ですね、バレンタインというのもチョコというのも知りませんし」
私はそれを捨てようかと一瞬思いましたが何か興味を引き持って帰ることにしました。
そしてその夜、私はその本を読みふける事になる。
「う〜ん、どうしましょう……」
次の日、私は悩んでいました。
どうやら、本から読み取るにバレンタインとは人間界のイベントの一つのようです。
内容は女の人が好きな男の人にチョコレートというお菓子を想いとともに贈るというものみたいです。
そしてこのイベントがかなり人間界で重要なイベントだという事もわかりました。
ここで普通なら終わるのですが、私の好きな人、相沢祐一は人間……
そして今日は2月10日、バレンタインという日は2月14日らしいので時期的には準備もできますし良いタイミング。
これは天が私にこのイベントに参加しろと言っているのでしょう。
しかし、ここで問題が――
「魔界にチョコレートの材料がありません……」
簡単な方法では製品のチョコを溶かして型にはめて固めるらしいのですけど、チョコ自体ありませんし。
カカオの実なんて実も魔界に存在してません……
そうしていると真琴が通りかかり、私が悩んでいるのを見てやってきました。
「美汐、どうしたの?何か悩んでいるように見えるけど」
「真琴、実はですね――」
そして真琴に私が悩んでいる事を話した。
「そうねぇ、こっちにある物で代用できないかな?」
「代用ですか……確かにそれしかないとは思いますが、私はチョコという物も、カカオという実がどんな物かもわからないですから」
「う〜ん、真琴も向こうにいたときは狐だったから食べた事無いはずだし……祐一に聞いたらどう?」
「それは駄目です。こんな時期にチョコの事を聞くなんて私達が作ろうとしていることがバレバレじゃないですか」
「そうかぁ。じゃあ、その本に何か書いてないかな?」
「いえ、わかるのはチョコレートという食べものがこげ茶色をしているということだけでした」
「えっ、こげ茶色?美汐、ちょっとその本見せて」
真琴に本を渡す。
「あっ、これ、真琴食べた事があるわ、こっちにくるちょっと前に祐一に食べさせてもらった事がある」
「本当ですか!どんな感じの食べものでした?」
「え〜とね、ちょっと硬いんだけど口の中に入れているとドロッて溶けて、甘いけどちょっぴり苦かったかな」
「口の中で溶けて、甘くて少し苦いですか……あの実なら代用がきくかも!」
「なにかあったの?」
「ええ、食虫植物のモルボルの実が確かそんな味がすると聞いた事があります」
「えっ、食虫植物……」
「大丈夫です、現地の人は食べているそうですから、それよりあれを取りに行くなら3日ほどかかりますから急いで仕度をしないと」
「真琴も手伝う」
「助かります。二人でおいしいチョコを作りましょうね」
そうして私達はモルボルの実を捜しに出かけた。
「ところで、その実以外の材料はどうするの?」
「それ以外のものは市場に似たような物があったので大丈夫でしょう」
そしてバレンタイン当日の朝――
「できました〜」「できたー」
現在朝の7時、相沢さんが起きてくる時間帯です。
ギリギリ間に合いましたね。
それにしてもモルボルがあれほど手強い植物だとは思いませんでした。
あれが吐く臭い息は反則です。一体どれほどのステータス異常になったことか。
まあ、とりあえず味見をする時間がなかったのが心残りですが色はそっくりですし大丈夫でしょう。
では、いざ出陣です。
「おう、真琴に美汐お姉……じゃなくて天野、おはよう」
「おはようございます相沢さん。ところで今日は何の日か覚えていますか?」
「今日……か?」
う〜ん、と考え込む相沢さん。
「なによ、祐一覚えてないの?今日はバレンタインでしょう!」
「そうか、今日は2月14日か!いや〜すっかり忘れていたよ」
少し申し訳なさそうな顔をする。
「それで、相沢さんにこれ、チョコレートを。真琴と二人で作りました」
「ありがとう、うれしいよ。魔界にきて、まさかチョコが食えるとは思わなかったから」
そう言って包んでいた包装を解いていく。
よかった、よろこんでもらえました。
まだ食べてもらってもないのに、相沢さんの笑顔を見れただけで私も嬉しくなる。
「お、手作りじゃないか。じゃあ、さっそく頂きます」
「どうぞ、こっちに材料がなかったので別の物で代用してみました」
「祐一、ありがたく食べるのよぅ」
そして相沢さんがチョコを口に入れる。
すると段々顔が笑顔になっていく。
よかった、ちゃんとできていたみたいです。
そう思った瞬間、相沢さんがその笑顔のまま真横に倒れる。
「えっ、相沢さん!」
急いで体を抱き起こすと顔が真っ青になっていた。
「美汐、真琴達もしかして失敗した……?」
「そんな!だってこんなにそっくりな色をしているんですよ」
そう言って相沢さんの手に握られているチョコを口に入れる。
ほら、ちゃんと甘いじゃないですか……って、甘い、甘すぎる!!!!
そして苦い、思わず吐きそうになるこの強烈な苦味。
その上、ドロッとというものじゃなくねばぁ〜っというこの感触……
「美汐、大丈夫!!」
真琴が不安そうな顔で私を見てくる。
そんなに凄い顔をしているんでしょうか……
そしてそんな事を思いながら目の前が真っ白になっていった。
私と相沢さんはこのあと、半日ほどして回復した。
しかし、このことが原因で相沢さんは甘い物、特にチョコレートが苦手になってしまいました。
そして人間界に戻ったあと、相沢さんはバレンタインの度に苦しむ事になることになるのですが、それはまた別のお話という事で。
あとがき
ふと思い浮かんだのはいいけど、1話分になりそうでないエピソードを書いてみようというおまけ企画の第2弾、バレンタインでした。
祐一「おい、こら!なんで俺が甘い物が苦手になるエピソードなんか作るんだ!」
いや、始めはそうじゃなかったのよ。それがオチを考えていくとこれが自分ではすっきりしたので。
ご愁傷様です〜
祐一「ところでこれってその1より先に完成してたんだよな」
そうだね、去年の12/8にできてたけど時期をあわせました。
祐一「でもこれ、わざわざあわすほどの内容か?これ」
それを言われるときついかも、モルボル知らないとかなり微妙な内容かもしれないし。
祐一「さて、これで書きためがなくなったぞ」
そうなのよ、そろそろ本編書かないと。
アルトネリコや戦国バサラやらで手がつかない状態になっちゃってるけど……
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